事例研究(嫡出推定・令和4年改正民法) 2022/12/12

【離婚後300日以内、再婚すれば「現夫の子」に 嫡出推定を見直し】~ライブドアニュース


<記事抜粋>

「離婚後300日以内に生まれた子の父は前夫」という「嫡出(ちゃくしゅつ)推定」規定を見直し、再婚後に生まれた場合の父は「現夫」とする改正民法が10日、参院本会議で成立した。

2024年夏までに施行される。



<争点>

・嫡出推定

・再婚禁止期間

・嫡出否認

・親権者の懲戒権



<所感>

令和4年12月10日に成立した改正民法のポイントは、①離婚後300日以内に出生した子であっても出生時に母が再婚していれば後夫(=再婚配偶者である夫)の子と推定する規定に改める点、②嫡出推定規定の見直しに伴い女性のみを適用対象とする婚姻障害である再婚禁止期間規定を削除する点、③父のみに認められていた嫡出否認の訴えの原告適格を母と子にも付与し、出訴期間を3年に伸長する点、④親権者の子に対する懲戒権の規定を削除する点の4つである。

②、③、④は良いとして、①については、以下のような問題点が残っている。

すなわち、(1)母が離婚から300日以内に再婚しなければ従来と同様、子に前夫の嫡出推定が及ぶこと、(2)妻が離婚調停等で離婚を求めるも夫がこれに一向に応じない間に、夫以外の男性の子を懐胎し離婚成立前に子が出生するといったん夫の子と推定されてしまい、母が嫡出否認の訴えを提起して嫡出性を否定しなければならなくなるという手続的負担が課せられること、といった問題点である。

(1)については、婚姻の自由(これには法律婚を選択しないという自己決定をする自由も含まれる。)を保護する観点から、前夫の嫡出子と推定するのではなく、離婚後出生した子は後夫の嫡出子又は非嫡出子とすべきである。

(2)については、実務的観点からすると、妻がいかに強く離婚を求めても、夫が断固としてこれを拒否したときは、夫に明確な離婚原因がない限り、速やかに離婚できないという実態がある。夫に明確な離婚原因がなくても別居期間が長期にわたれば婚姻破綻が認定されやすくなり離婚請求が認容される例が多いが、別居期間が長いか短いかは婚姻期間との相関関係によって判断されるため、婚姻期間が長い(たとえば10年以上)夫婦の場合、最低でも3年以上は別居を継続しなければ通常は離婚請求が認容されない。

そうすると、離婚を巡る係争中に妻に新しい恋人ができて、離婚成立前に子を懐胎するという事態が起こる可能性があり、このような場合にも出生した子を前夫の子と推定することは不合理と言わざるを得ない。

なお、別居期間中に出生した子は夫による懐胎可能性がないことから嫡出推定が及ばないと解するのが通説の見解であるが、戸籍事務を管理する市役所等の職員にこれを説明して納得させるのは容易なことではない。