最近のニュースから【家族法(面会交流)】

父母以外、審判申し立て不可 子の面会交流で初判断 最高裁


<記事抜粋>

「子どもの面会交流や監護者指定について、離婚する父母ではなく、祖父母などが家庭裁判所に審判を申し立てることができるのか―。 こうした点が争われた2件の家事審判の許可抗告審で、最高裁第1小法廷(池上政幸裁判長)は『父母以外はできない』とする初判断を示した。29日付の決定。」

「2件中1件は、母方の祖父母が、母親の死後、父親に孫との面会交流を求めていた。もう1件は、両親の離婚に伴い母方の実家で祖母と暮らしていた子が、母親の再婚の際に同居を拒否したケースで、子が祖母との生活を望んだため祖母が自身を監護者とするよう家裁に審判を申し立てていた。」



<所感>

民法766条1項前段は,「父母が協議上の離婚をするときは,子の監護をすべき者,父又は母と子との面会及びその他の交流,子の監護に関する費用の分担その他の子の監護について必要な事項は,その協議で定める。」と規定しており,同条2項は「前項の協議が調わないとき,又は協議をすることができないときは,家庭裁判所が,同項の事項を定める」と規定している。

このような民法の規定をうけて,家事事件手続法別表第二第三項は,「子の監護に関する処分」を家事審判事件の一つとして挙げている。

記事では,子の祖父母が,子(申立人からすると孫)について,面会交流実施や監護権者変更の処分を求めて家庭裁判所に家事審判の申立てをしたところ,いずれも却下され,当該却下の審判に対する許可抗告(家事事件手続法97条)もすべて棄却された旨報じられている。

家事審判の申立ては,申立書を家庭裁判所に提出してしなければならず(家事事件手続法49条1項),家事審判申立書の必要的記載事項として,申立人は,「当事者」(家事事件手続法49条2項1号)を記載しなければならない。

本件の最高裁の判断が出るまで,面会交流審判・監護権者変更審判の申立権者である「当事者」に,父母以外の第三者が含まれるかは争いがあり,家裁・高裁で判断が分かれていた。

本件の事案は,いずれも祖父母が孫について面会交流審判・監護権者変更審判の申立てをすべき必要性が認められる事案である。

しかしながら,最高裁は,民法766条1項前段の文理解釈によって,父母以外の者に申立適格を認めない旨の判断をしたことになる。

すなわち,民法766条1項前段の文言に照らして被監護者の祖父母が家事事件手続法49条2項1号の「当事者」に該当しないことを根拠に,当該祖父母は当該家事審判の申立適格を有しないとして申立てを却下した家庭裁判所の判断を最高裁が支持したものと思われる。

実務では,祖父母による面会交流調停・監護権者変更調停の申立ては認められている。

調停申立ては認められるのに,審判の申立ては認められない,という結論は一般人の感覚からはなかなか理解されにくいのではないか。

調停は合意形成の場であるのに対し,審判は紛争解決の場であって審判対象との法的利害関係が明確かつ濃厚な者に限り権利救済を図る手続であるという法律家の論理を,どのようにして法律家以外の人に理解させるかは難しい課題だ。