弾劾裁判所とは何か?

裁判官訴追委員会は,令和3年6月16日,仙台高等裁判所判事である岡口基一裁判官の罷免を求める訴追を決定した。


裁判官が罷免の訴追を受ける例は,日本国憲法施行後9人目と報じられている。


過去8件の弾劾裁判のうち,7件で裁判官が罷免されている。


日本国憲法上,きわめて高い独立性(憲法76条3項等)が保障されている裁判官を罷免する裁判官弾劾制度とはどのような制度なのか。


日本国憲法78条前段は,

「裁判官は,裁判により,心身の故障のために職務を執ることができないと決定された場合を除いては,公の弾劾によらなければ罷免されない。」

と定め,さらに裁判官弾劾の機関に関し同64条1項が,

「国会は,罷免の訴追を受けた裁判官を裁判するため,両議院の議員で組織する弾劾裁判所を設ける。」

と定めている。


弾劾裁判所は,特別裁判所設置の禁止(憲法76条2項前段)の例外として,憲法自身が許容し,その設置を要請している裁判機関である。


弾劾裁判所は,もっぱら裁判官の罷免事由の存否及び罷免の可否に関する審理判断を行う,一審制の特殊な裁判機関であり,その裁判に対して通常裁判所への不服申立ては一切認められていない(罷免の裁判を受けた裁判官が弾劾裁判所に対して資格回復の裁判を請求することは認められている(裁判官弾劾法38条)。)。


なお,裁判官は,退官後弁護士登録できるのが原則であるが(弁護士法5条1号),弾劾裁判所の罷免の裁判を受けた裁判官は,弁護士となる資格を有しない(弁護士法7条2号)。


罷免の裁判を行う者を「裁判員」というが,この裁判員の員数は衆議院7名,参議院7名と定められており(裁判官弾劾法16条1項),裁判員は各議院における選挙で決定される(国会法125条1項)。

弾劾裁判所の「裁判長」は,裁判員の互選によって決定される(国会法125条2項)。


罷免の裁判は口頭弁論に基づいてしなければならず(裁判官弾劾法23条1項),弾劾裁判所の対審及び判決の宣告は公開の法廷で行われる(裁判官弾劾法26条)。


以上が裁判官弾劾制度の概要である。


岡口裁判官の事案については,追って考察の上,投稿する予定である。