事例研究(優越的地位の濫用) 2022/06/17
【食べログ側に賠償命令、評価点下落「優越的地位の乱用」】~日本経済新聞
<記事抜粋>
グルメサイト「食べログ」で評価点が不当に下がり、売り上げが減少したとして、飲食チェーン店がサイト運営のカカクコムに約6億4000万円の損害賠償などを求めた訴訟の判決が16日、東京地裁であった。
林史高裁判長は独占禁止法が禁じている「優越的地位の乱用」に当たると判断。
チェーン店側の請求を認め、カカクコムに3840万円の支払いを命じた。
原告側によると、評価点を決めるルールの「アルゴリズム」(計算手法)の妥当性が争われた初の司法判断とみられる。
アルゴリズムは評価点数や表示順位を決める際の独自基準として、グルメサイトだけでなく、さまざまな分野のサイトで使われている。
判決は、サイト運営会社による評価方法に影響を与える可能性もある。
<争点>
独占禁止法上の優越的地位の濫用
<所感>
この判決は、画期的な判決だと経済法の専門家が評している。
原告は、食べログの有料会員(プレミアム会員)で、お金を払って宣伝してもらっている立場だから、広告の代理を業とするカカクコムが、一部のクライアントに対して背信的な行為をしていたことに対し、裁判所が当該行為は「優越的地位の濫用」に当たると判断して民事的な制裁を科す形になった。
他方、カカクコム側は、「そもそも当社は、クライアントに対して優越的地位になく、食べログサイトは代理広告ではなくて、あくまでもコンシューマーの口コミを媒介するメディアを提供しているにすぎない。」と反論していたのだろう。
カカクコムは、即日控訴している。
しかし、アルゴリズムの操作が事実なら、サイト運営者という優越的な地位を利用して、「チェーン店」の評価を一律に下げるという公正競争を妨げる行為をしたことは明らかであり、控訴審でもカカクコムの主張がとおらない可能性は高いものと思われる。
韓流村が無料会員登録をしていた業者だったら、おそらく訴訟提起には至っていなかったのだろうが、毎月お金を払っていたにもかかわらず、意図的に評価を下げられるような行為をされれば、誰でも訴えたくなるだろう。
もっとも、本件で、最終的にカカクコムの敗訴が判決で確定すると、同様の訴訟が大量に提起されることが容易に予想され、カカクコムの今後の業務に大幅な支障が生じるであろうことも予想できる。
控訴審で和解して終了という結末が最も穏便な解決になるのだろうが、はたして控訴審で双方が納得できる和解案は提示されるのだろうか。
弊所も弁護士ポータルサイトを利用しているので、この訴訟の帰趨には少なからず関心がある。
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