事例研究(窃盗症) 2022/06/22

【読売新聞記者、弁当など万引き容疑で再逮捕 知床に出張中】~毎日新聞


<記事抜粋>

北海道警斜里署は21日、読売新聞北海道支社記者、高橋●容疑者(24)=札幌市中央区大通西23=を窃盗容疑で再逮捕した。

高橋容疑者は18日、札幌市内の書店で漫画1冊(販売価格880円)を盗んだとして逮捕されていた。

再逮捕容疑は4月28日午後8時55分ごろ、北海道斜里町ウトロ東のコンビニエンスストア「セイコーマート・ウトロ店」で、弁当や菓子など食料品9点(販売価格計2657円)を盗んだとしている。

「悪いことをした」と容疑を認めているという。


<争点>

窃盗症


<所感>

新聞社の記者として稼働しており生活費に困っている様にみえないのに、なぜこんなことを頻繁にするのか疑問に思う人もいるだろう。

私は、職業柄こういう人をたくさん見ている。

これは一種の病気だと思う。

最近ようやく窃盗症(クレプトマニア)という病気が認知されるようになってきたが、検事はもちろん裁判官もなかなかクレプトマニアという病気が窃盗の原因であることを認めてくれない。

司法判断としては、これは単なる「規範意識の鈍磨」として扱われる。

たしかに刑法所定の心神喪失・心神耗弱には決して該当しない病気であるが、一般的常識人は絶対にしないであろう行為(万引き)を理由もなく悪びれることなく実行してしまう点で、規範的障害に直面していないのである。

刑法上処罰に値する行為は行為者が規範的障害に直面しながらこれを打ち破って構成要件該当行為に出たものに限る、という責任主義の原理に鑑みると、クレプトマニアにり患した者が犯した窃盗は、責任能力ある者が犯した窃盗と区別して処分することがのぞましい。

現行法上はクレプトマニアり患者にも完全責任能力が認められているが、クレプトマニア以外の窃盗犯と同様の刑事制裁・処遇を施すだけでは、根本的な問題解決につながらない。

むしろ薬物事犯と同様の治療プログラムないし更生プログラムを実施しなければ、クレプトマニアり患者は何度でも再犯を重ねることになるだろう。

治療プログラム・更生プログラムもさほど実効性が高くないことは周知の事実といえるが、それでもやらないよりはましである、と信じている。