事例研究(宗教法人の名称変更) 2022/08/04

【旧統一教会名称変更 下村元文科相があらためて関与を否定「受理しろと申し上げたことはない」】~TBS NEWS DIG


<記事抜粋>

旧統一教会の名称変更を巡り、当時、文部科学大臣を務めていた下村博文衆議院議員が3日、記者団の取材に応じ、文化庁の担当者に対して「受理しろと申し上げたことはない」と述べ、名称変更への関与を改めて否定しました。

下村博文 元文科大臣

「私がですね、それ(名称変更)を受理しろとか、どうだとか、いうようなことを担当者に申し上げたことはなかったという意味で、関係なかったということを申し上げてます」

2015年に文化庁が認めた旧統一教会の「世界平和統一家庭連合」への名称変更について、当時、文科大臣を務めた下村氏はこのように述べ、「報告を受けたが、実際は文化庁・文化部長の決裁、判断だった」として認証への関与を改めて否定しました。


<争点>

宗教法人の名称変更手続


<所感>

宗教法人の名称は、規則(注:宗教法人の内部的基本事項を定める規範及びこれを記載した書面。会社における定款のようなもの。)の必要的記載事項であり(宗教法人法(以下、法律名を省略する。)12条1項2号)、名称の変更に際して規則の変更が必要となる。

そして、宗教法人の規則は、設立時のみならず変更時にも所轄庁の認証を要するから(14条1項、28条1項)、所轄庁は宗教法人の名称変更に際し必ず関与することになる。

世界平和統一家庭連合(旧統一教会)のように、主たる事務所の所在地以外の都道府県内にも境内建物を備える宗教法人の所轄庁は、「文部科学大臣」である(5条2項1号)。

宗教法人法を一覧しても、文部科学大臣が文化庁長官に認証権限を委任することを認める根拠規定は存在しない。

認証実務を担当する部署は、文化庁文化部とされているが、最終的に「認証」という行政処分を下すのは「文部科学大臣」自身である。

下村氏は、自分が文部科学大臣を務めていた時に旧統一教会の名称変更手続がなされたことに関し、「受理しろと申し上げたことはない。」という不合理な弁明をして関与を否定しているが、名称変更は届出制ではないから規則変更認証申請に対し、認証という処分をした時点で当然関与している。

なお、宗教法人法は、行政手続法制定前から存在する法律であり、現在もなお申請の「受理」という概念を遺しているが、行政手続法の趣旨に照らすと、申請の受理の拒否は原則として許されず、申請書に形式上の不備がない限り、申請書が所轄庁の事務所に到達したら遅滞なく申請に対する審査を開始しなければならない。

だから、文部科学大臣が文化庁文化部の担当者に対して「受理せよ」あるいは「受理するな」などと進言したとしても申請に対する審査は原則として遅滞なく開始しなければならない以上、文部科学大臣の進言は無意味であり、文部科学大臣が「受理せよ」などと言わなくても、審査担当者が認証申請に対する審査を開始するのは当然である。

本件の最大の問題点は、当時文部科学大臣を務めていた下村氏がいかなる意思決定過程により旧統一教会の規則変更認証申請に対して認証の処分をしたか、という点であり、これを「全部部下(=文化庁文化部長)がやったことで自分は関係ない。」と言い張るのは、処分権者としてあるまじき言動である。

宗教法人規則変更認証申請に対する認証という終局処分の責任はすべて文部科学大臣にある。

もちろん、意思決定過程に係る説明責任も含めて。