事例研究(霊感商法と組織的犯罪処罰法) 2022/08/12

【古市憲寿、岸田改造内閣と旧統一教会の関わり『法律違反ではない』発言に疑問の声「被害者いるのに?」】~ヤフーニュース


<記事抜粋>

8月11日放送の『めざまし8』(フジテレビ系)で、10日に発足した第2次岸田改造内閣の閣僚のうち、少なくとも7人が世界平和統一家庭連合(以下、旧統一教会)と何らかの関わりがあった疑惑を報道。

出演していた社会学者の古市憲寿(37)の発言に疑問の声が集まっている。

出演していた古市は「法律違反というわけでもないと思うので、ちゃんと説明すればいいと思うんですね」と持論を展開。

「政治と宗教の関わりって旧統一教会だけでなくて、さまざまな宗教、立正佼成会であるとか創価学会であるとか、もしくは神社本庁であるとか、伝統宗教、新宗教含めて、政治と宗教の関わりはずっと昔からあるんですよね」と指摘した。


<争点>

霊感商法と組織的犯罪処罰法


<所感>

古市憲寿は社会学者を自称しているが、法律のことにも精通しているつもりらしい。

しかし、古市の発言は誤っている。

まず旧統一教会と、立正佼成会等のその他の宗教団体を同一に論じてはならない。

旧統一教会が行っている霊感商法は、組織的犯罪処罰法(以下「法」と略記する。)における「組織的詐欺」(法3条13号)又は「組織的恐喝」(法3条14号)に該当する可能性がある(単に可能性があるというよりもその蓋然性が著しく高い。)。

それゆえ、自民党が、かかる組織的犯罪を実行する「団体」(法2条1項)から政治献金を受ける行為は、「犯罪収益等」(法2条4項)を「収受」する行為に当たり、犯罪収益等収受罪(法11条本文)の客観的構成要件に該当する。

したがって、自民党が説明すべき事項は、単なる政治的な意味における旧統一教会とのつながりについてではなく、法的な意味において「情を知って」(法11条本文)上記犯罪収益等を収受したか否かという主観的構成要件要素について説明しなければならない。

もっとも、この点は、記者会見での説明には親しまず、捜査において供述すべき事項である。

刑事法に関しては遡及処罰の禁止という憲法上の原則(憲法39条)があるため、組織的犯罪処罰法施行前の収受行為はたしかに違法とはいえない。

しかし、同法施行前でも霊感商法自体が「詐欺」ないし「恐喝」に該当することは明らかであり、かかる違法行為を摘発するどころか黙認、助長し、さらには政治的協力を継続的に受け続けてきたことについて自民党の道義的責任が皆無であるとは到底思われない。

組織的犯罪処罰法は主として暴力団の組織的犯罪(当初は銃器売買と薬物売買が対象だった。)を取り締まるため、通信傍受法とセットで制定された法律だったが、組織的犯罪処罰法はその適用対象を暴力団に限定しているわけではなく、旧統一教会のような反社会的団体に適用する余地は十分ある。

組織的詐欺や組織的恐喝を行う反社会的団体から情を知りながら犯罪収益等を収受する(=受け取る)行為は犯罪行為であるということは、覚えておいて損しないだろう。

特にテレビのコメンテーターとして活動している「知識人」や、現職の国会議員。


※旧統一教会の事案ではないが、霊感商法に対して組織的犯罪処罰法が適用された例として、以下のリンクの事件がある。


https://www.nikkei.com/article/DGXNASDG0102I_R00C12A5CC1000/?fbclid=IwAR0xyaQsYtKlO6jMHS--_GBUgQvMY7CkCd_VmfYuJDv4NYe7xsSB6TWk2s0