コンメンタール商法・会社法①(2023/11/29)

*主要七法(憲法、行政法、民法、刑法、商法・会社法、民事訴訟法、刑事訴訟法)について、重要な条文を挙げて、その解釈論を紹介します。判例がある場合には判例も適宜紹介します。コンセプトは、弁護士・資格予備校講師がお送りする5分で読める法律講義。


【条文】

(株主の平等)

会社法第109条第1項

「株式会社は、株主を、その有する株式の内容及び数に応じて、平等に取り扱わなければならない。」



【解説】

掲記の会社法109条1項は、「株主平等原則」を定めたものです。

株式会社は、私たちの日常生活に欠かせない身近な存在です。

では「株式」とはどのようなものでしょうか。


株式とは、株式会社の社員(注:法律用語で「社員」は社団の構成員を指す。会社従業員は法的には「社員」ではない。)すなわち株主の地位であり、この地位を割合的単位の形に細分化したものです。

株主が所有するものが「株式」であり、株式を持つ人を「株主」と呼んでいるため、株式と株主の各定義は互いに相補的な関係にあります(循環論法的関係とも言えるでしょう。)。


株式とは単位化された株主の地位である、ということは、同時に出資単位であると言えます。

株式が計数可能な単位の形をとることにより、株主の会社に対する発言力には自ずと強弱の差異が生じることになります。

すなわち、より多数の株式を持つ株主は、より少ない株式しか持たない株主と比べて強い発言力を持つことになります。

種類株式を発行していない会社においては、すべての株式について、原則として1株当たり1個の議決権(注:株主総会での投票の権利)が与えられます。

単純化して言うと、100株持っている株主は100票、30株持っている株主は30票を株主総会で投じることができます。

このようにより多くの議決権(=投票権)を持つ株主の意向が反映されやすい意思決定制度が株主総会で採用されており、これを一般に「資本多数決」と言います。

資本多数決は、たくさんお金を出した人(=出資した人)の意向が優先的に反映される、という点で明快であり、かつ資本主義体制に適合した意思決定方式です。


資本多数決を正当化する前提は、同一の会社が発行する株式はすべて同一内容のものでなければならない、という株式の均質性です。

しかし、会社法は、株式の均質性の例外として、「種類株式」(会社法108条)という概念を導入しています。

たとえば剰余金配当の態様に優劣を付けて株式相互間で差別化をはかることが認められています(会社法108条1項1号)。


種類株式制度は、①金融商品の多様化のニーズに合致させること、②議決権制限・取得条項等の付款を付けることでM&A(合併買収)を円滑化することを目的として導入された制度です。

これらの他にも趣旨は考えられますが、企業と投資家にとって重要な制度趣旨は以上の2点に尽きます。


掲記の会社法109条1項で「株式の内容及び数に応じて」と定められているのは、内容が異なる株式(=種類株式)が存在することを前提としているからです。